雪のおもしろう降りたりし朝、人のがり言ふべき事ありて、文をやるとて、
雪のこと何ともいはざりし返事に、「この雪いかが見ると一筆のたまは せぬほどの、ひがひがしからん人の仰せらるる事、聞きいるべきかは。 かへすがへす口をしき御心なり」と言ひたりしこそ、をかしかりしか。 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし。 「徒然草第三十三段」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 吉田兼好は、雪の降った日に、手紙をしたためたのだが、簡潔に 用件だけを書いたのを批判されている。 せっかくの雪を、どんな風に感じと見ているか、という事を一筆書 かないというのは、趣の無いひねくれもので、そんな方の言う事 など、どうして承知できるのか?という話が記されている。 手紙とは、離れた同士のやり取りで、ましてや平安時代となると、 その手紙こそが、いろいろな情景を映し出す玉手箱だったのだと 思う。 現代になれば、天気予報を見るだけで、日本中、世界中の天気 が一目瞭然となる。ところが、平安時代はそれさえもわからない。 そんな時代だからこそ、手紙をしたためている時の情景描写を欲 するのだろう。これは現在でも生きており、その時の季節と気候を 現して、本題に入るという手法は、やはり趣のあるものなのだろう。 友から、たまにメールが来る「いだすか?」と。それに返信をする 「へい」と。なんと用件だけで、あっけない内容ではあるけれど、 マンネリ化すると面倒でもあるので、いちいち情景描写なんて打 ってられない…(^^;
by stavgozint
| 2008-10-31 17:47
| 「徒然草」
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