たち走り 貴き賎しき おのがどち はかれるものを
ちちのみの 父に別れて ははそばの 母に手離れ 世の業は 多かるものを 何しかも 心にあらぬ たをや女の 操くだて しながら鳥 猪名の湊に 寄る船の 梶枕して 浪のむた かよりかくより 玉藻なす なびきて寝れば うれたくも 悲しくもあるか 「宮木の塚」の最後に載せてある歌の一部であるが、この 歌には遊女の不安定さが現れでている。 高級な遊女は、教養も高く「古今和歌集」には江口の遊女 として有名だった白女の歌も載っている。 命だに心に叶ふものならば 何か別れの悲しからまし 「古今和歌集(白女)」 知識が高い遊女でありながら、その身を男に捧げるという 罪深き存在。巷の女性よりは高みに存在しながら、その身 分をまた蔑みられもした。 また「後拾遺和歌集」には、宮木という遊女の歌が載せら れている。 津の国の難波のことか法ならぬ 遊びたはぶれまでとこそ聞け 「後拾遺和歌集(宮木)」 この宮木の歌は「津の国の難波渡りに身すぎする妾たちの アソビタハブレのしわざもどうして仏法にちがうものであ りましょうか」と訳されている。 当時、末法思想が蔓延して極楽浄土を求める庶民の心には、 いかにして往生できるものか?という心があった。ところ が、法然の教義には罪深きものこそ、往生できるというも のだった。だからこそ、遊女達は法然の下に集まったのだ ろう…。
by stavgozint
| 2007-10-01 22:45
| 「宮木が塚」
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