沙石を空に巻上ぐる。見る見る、一段の陰火、君が膝の下より
燃上がりて、山も谷も昼のごとくあきらかなり。光の中につら つら御気色を見たてまつるに、朱をそそぎたる龍顔に、荊の髪 膝にかかるまで乱れ、白眼を吊りあげ、熱き嘘をくるしげにつ がせ給ふ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この深い闇の黒の情景に、鮮やかな炎という赤が浮かびあがる。 深い怨念の闇という黒色に浮かび上がる、復習という情熱の赤色 を示す崇徳上皇の情景だ。 こうして見ると、穏やかで美しい情景の色彩描写をして白峰へと 辿り着いた西行を待っていたのは、月の明かりも届かない常なら ぬ山の深さと、崇徳上皇の心の闇の黒色に加え、激しい怨念の赤 色という色彩だった。 これが最後に西行の一言で我にかえる崇徳上皇に、白々明ける夜 明けという白色に白峰の白がかぶるのかもしれない。 これを舞台で上演すれば、見事な色彩の舞台になると思われる…。
by stavgozint
| 2008-04-15 21:17
| 「白峰」
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