>私は琴を手にして柔らかい草花が
>波打つ道を彷徨する >おお美よ! この王維の詩の一遍にはゲーテの「ファウスト」での一言…。 「時よとまれ!おまえは美しい!」 この言葉に受け継がれているのだろう。奇しくもゲーテと上田秋成は、 同じ時代を生きた人間だ。若干、上田秋成の方が15年ほど年上では あるが、同じ中国の思想に触れ、それを自らの作品に反映させている 点は同じなのだろう。 自然には、エロスとタナトスが渾然一体としている。常緑樹である松 は、常に緑を保っていると思われているが、その命はいつか尽きる。 また月は日々変化しながら天空を渡るが、それは永遠的だ。 「江月照松風吹 永夜清宵何所為」の言葉に現される、永い清らかな 宵は永続的であるが、そこには目に見えぬエロスとタナトスが渾然 一体となっている。そこに気付けば、その美しさを理解できるのだと 思う。ファウスト教授の夢のような旅も、「青頭巾」で示された「江 月照松風吹 永夜清宵何所為」という言葉も、エロスとタナトスに満 ち溢れている。 ファウスト教授は「時よとまれ!おまえは美しい!」という言葉を発 したら、悪魔であるメフィスト・フェレスに魂を奪われてしまう。 また阿闍梨もまた「江月照松風吹 永夜清宵何所為」の意味を悟り、 魂は昇華された。 つまりファウストも阿闍梨も、この世に渾然するエロスとタナトスの 融和の美を知り、その美しさに魂を奪われ「お前は美しい!」と悟っ たのだと考える。
by stavgozint
| 2008-10-14 17:54
| 「青頭巾」
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