蘭若に帰り給ひて、堂の前を深く堀せて、鉢のままに埋めさ
せ、永劫があひだ世に出づることを戒しめ給ふ。今猶、蛇が 塚ありとかや。庄司が女子はつひに病にそみてむなしくなり ぬ。豊雄は命恙なしとなんかたりつたへける。 道成寺へは、まだ一度も行った事が無いのだけど、道成寺境内 の本堂前に金巻のあとの「蛇室」の石碑があり、清姫の蛇塚 は、境外の田の中にあるというが、この「蛇性の淫」のエピ ローグの記述は、まさに「安珍・清姫伝説」に帰結させるも のなのか? ところで真女児に取り憑かれた富子は結局、病気になり死ん でしまうが、豊雄は命に別状は無かったと伝えられたと結ん でいる…。 もしも、豊雄に少しでも真女児と、犠牲になった富子に対す る想いがあったのなら、その後に出家したとなるのだろうが、 ここでの豊雄は、単なる被害者の男であっただけ。しかし安 珍は因果応報、清姫に鐘の中で焼き殺されてしのうのだが、 豊雄は一般的な怪談映画の主人公よろしく、無事に生き延び ている。これを、どう捉えるか? ここまで読んできて、上田秋成はストーリーの中にいいろな プロットを散りばめて、皮肉交じりでストーリーを展開して きたようだが、エンディングに関しては何故か釈然としない。 ただ逆に言えば、単なる怖い話として一般に知らしめた「蛇 性の淫」を、その当時の人々がどこまでその奥を知り得たの か?という事なのかもしれない。この結末を記した秋成の心 情に関しては、もう少し考えてみたい…。
by stavgozint
| 2007-06-01 22:25
| 「蛇性の淫」
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