「白峰」は、出だしの紀行文の美しい色とりどりの情景が浮
かび上がる表現が際立っており、それに対比するかのように、 山の深い闇と、崇徳上皇の怨念という暗く深い闇を覆わせて いると思う。 そして西行の歌と共に、白々と夜が明けて闇の黒色を吹き払 うという、陰影に際立った構成となっている。 文章には、いろいろなものを含んでいるのだが、それよりも まして、鮮やかな色が際立つ文章なのだと思う。 白色は神の色、もしくは浄化の色を示すという。寒い冬が訪 れ、大地を白い雪が覆い隠して浄化し、その浄化された大地 に再び、新たな生命が生まれるのだという、日本古来からの 思想があった。その思想に合わせる為、敢えて「白峰」とい う題名に決めたのではないだろうか? また黒不浄という言葉は、死を現す。まあ大抵の死霊は、夜 の闇と共に訪れるのだが、主人公である神霊の崇徳上皇を現 す場合、白と黒の対比は必然だったのだろう。死霊としての 黒色に、自らは人間だと我に返り、夜が空ける様の対比。 そして崇徳上皇の怨念という情熱を現したのが、崇徳上皇の 周りを囲んだ陰火だ。赤色は血を現し、そしてその者の情熱 を現すのだという。 話は脱線するが、ボクシングなどでの青コーナーは王者の色 で知性を現し、挑戦者はその情熱を現す為に赤コーナーなの だという。 秋成の色鮮やかな文章の技法に、当時の人々は何を思い、何 を感じたのだろうか?
by stavgozint
| 2008-04-16 16:40
| 「白峰」
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