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「青頭巾」展開部其の四

夜更けて月の夜にあらたまりぬ。影玲瓏としていたらぬ隈もなし。
子ひとつとおもふ此、あるじの僧眠蔵を出でて、あわただしく物
を討ぬ。たづね得ずして大いに叫び、「禿驢いづくに隠れけん。
ここもとにこそありつれ」と…
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月の出と共に、阿闍梨は鬼に変貌した。ここをどう捉えるかだ。
月に関する伝承は、古今東西に広がりを見せる。


*月の軌道が狂ったのだ。いつもよりずっと地球に近づいたので、
 人間どもが狂いだしたのさ。   シェイクスピア「オセロー」

*魔物に憑かれて生じる精神錯乱。怏々として楽しまない鬱病。
 月にうたれて生ずる狂気…。      ミルトン「失楽園」


月が、人の狂気を導き出すものと信じられていた。「竹取物語」でも、
「月の顔を見るのは忌むべきことだ。」とある。つまり、平安の世で
は、月を眺めるのは不吉だという意識があったのだろう。何故かと言
うと、それは人間としての”死”をもたらすものという意識がある為
だったのだろう。

岩手の俗信に「月の光を浴びながら寝ると、寿命が縮まる。」という
のがある。月の光が、なんらかの影響を人間に与えているものという
意識はずっと伝えられてきたのかもしれない。

今では殆ど見られなくなったが、大正時代までは欧米のハロウィンの
ように子供らが近所の家々を回って供え物などを貰い歩くという風習
もあったというのは、もしかしてキリスト文化が日本国に混入されて
いた為なのかもしれない。

そして思う…もしかしてこれは日本版「禿山の一夜」だったのではな
いのか?
by stavgozint | 2008-07-31 20:05 | 「青頭巾」
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